今年のドラフト戦線のキーワードは“長身投手”である。

 センバツ準優勝投手の今朝丸 裕喜(報徳学園)は188センチ。各地の春季大会では197センチ右腕の小船 翼投手(知徳)、191センチ右腕の清水 大暉投手(前橋商)らが注目を浴びた。

 そんな彼らを上回る身長2mの大型右腕が千葉県にいる。千葉学芸・菊地 ハルン投手(3年)だ。父がパキスタン人、母が日本人の菊地は最速149キロの速球を投げ込む剛腕だ。すでにNPB全12球団が菊地を視察していたが、春季大会後には某MLB球団までが挨拶に来たという。

 中学まではまったくの無名だった菊地。いかにして身長同様スケールが大きい投手へ成長できたのだろうか。

無名だった中学時代に素質を見抜いた監督「体ができれば間違いなく成長する」

 今年5月、日大二との練習試合で菊地のストレートは149キロを記録した。昨秋から1キロ、1年前に比べると約10キロのアップだ。入学したころは120キロ前半だったというから、2年余りで20キロ以上球速は増した。

 キャッチボールの強さ、投球練習を見ても、明らかに速球投手の姿だが、120キロ後半のカットボール、フォーク、そして110キロ台の曲がりが大きいカーブも大きな武器だ。

 高校球児はケガなどをして成長が止まる期間が誰にでもあるものだが、菊池にはそれがない。まさに右肩上がりで成長を続けている。こんな選手は、なかなかいない。

 中学時代、菊池は名門・佐倉シニアでプレーした。同期には洗平 比呂投手(八戸学院光星)、石塚 裕惺内野手(花咲徳栄)という今年のプロ注目選手がいた。チームの主力は、甲子園常連の強豪校から注目され、進学していった。

 そんな中、控え投手で球速も110キロ台だった菊地は全くのノーマークの存在だった。しかし、一人の野球指導者が菊地のポテンシャルを見抜いた。千葉学芸の高倉伸介監督である。

「当時から身長は190センチもあってずば抜けて大きかったですね。ボールは遅かったですが、キャッチボールに惹かれるものがあったんです。とにかく器用な投げ方をしているんですよ。ヒジの使い方、指先の感覚も非常に良かった。体さえできれば間違いなく成長する投手だと思いました。また、立ち居振る舞いから人間性の良さを感じたので、佐倉シニアの松井進監督にお願いをして、入学が決まりました」

監督が立てた「3年計画」

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