<秋季東京都高校野球大会第16ブロックB:都立田無5-1昭和一>15日◇1回戦◇日大二高立川グラウンド

木製バット時代の高校野球には、下手投げや横手投げの投手が大勢いたが、50年前に金属バットの使用が認められてからは、減少傾向にあった。けれども複数投手の定着などで、近年は復活の兆しがみえている。それでも、先発完投となるとそう多くない。都立田無の曽山勇貴(2年)は、投げるときの腕の位置はサイドだが、モーションはアンダーハンドに近い。そして新チームになって最初の公式戦である昭和一戦で、被安打5の完投勝利を挙げた。

 曽山の持ち味は、スローボール。シンカーなどの変化球をたくみに使い、昭和一打線を翻弄する。曽山は3回まで無安打に抑える。4回表に昭和一の3番・谷口宗吾に中前安打を打たれるが、谷口は捕手・瀬下輝飛の牽制に刺され、進塁できない。6回表に昭和一の9番・高橋充が遊失で出塁すると二盗し、1番・橋本航の中前安打で還り1点を返したが、昭和一の得点は、この1点だけだった。

 都立田無は1回裏に3番・瀧上晃正(2年)、4番・貫井翔(2年)の連続二塁打で先制点を挙げると、3回、4回、5回と加点して5点を挙げる。リードを広げたことで、曽山の投球にも余裕ができる。9回表には安打を2本打たれたものの、本塁は踏ませず、5-1で都立田無が勝ち、代表決定戦に進んだ。

 完投した曽山だが、横手投げに変えたのは、今年の4月。諸熊伸亮コーチに勧められたことがきっかけだった。「スリークォーターで投げていましたが、球が速くなかったので勧められました」と曽山は言う。曽山は肩甲骨の可動域が広いのが利点。横手投げや、下手投げに適した体になっている。島修司監督は、「コントロールがいいし、いくらでも投げられます」と語る。スタミナ的にも余裕を持っての完投だった。

 次は都大会出場をかけて安田学園と対戦する。スローボールで勝負するのは勇気がいるが、「強豪校が相手でも打たせて取るピッチングをしたいです。緩い球を打たれたら仕方ないくらいのつもりで思い切って投げます」と曽山。都立田無は近年、秋季都大会になかなか出場できないでいるだけに、次は大事な試合になる。