前日に開幕8連勝でリーグ優勝を決めた富士大は15日、八戸学院大に5対7で敗れ今秋初黒星を喫した。敗戦の中、プロ注目の麦谷 祐介外野手(4年=大崎中央)が逆方向への第3号ソロ本塁打をマーク。大学ラストシーズンは1試合を残して打率.378、3本塁打、9打点、14盗塁と好成績を残しており、ドラフトに向け走攻守でアピールを続けている。

 同点の7回、1死走者なし。八戸学院大のエース左腕・西山 幹太投手(4年=開智日本橋学園)のスライダーを捉えた打球は左翼方向へぐんぐん伸び、フェンスを越えた。本人が「右の本格派を得意としているけど、いろんなタイプのピッチャーに対応しないといけない」と話すように、「左対左」も苦にしないことを再認識させる本塁打だった。

ダイヤモンドを一周した麦谷は雄叫びを上げながらホームイン。一時勝ち越しとなる一発に喜びを爆発させ、逆転を許し敗れた試合後は落胆の表情を浮かべた。

 優勝が決まったあとの試合でも感情をむき出しにして戦ったのには理由がある。「春の神宮(全日本大学野球選手権)に自分らが出られない中で、自分らに勝って出たチームが5回コールド負けしたのを見て悔しかった」。今春は優勝候補と目されながらも2位。優勝し全日本に出場した八戸学院大は初戦でコールド負けを喫した。ライバルに「完全勝利」して全国切符を奪い返すのが今秋の目標だった。

そんな中、前日は3打数無安打。「今日は絶対に打ってやろう」と臨んだ15日の試合も第1、2打席は凡退したものの、第3打席で安打を放つと、第4打席は前日抑えられた西山に一発を浴びせた。勝利には届かず、試合後は「今回のリーグ戦で一番悔しいです」とポツリ。それでも、「消化試合」と捉えずに全力でプレーする姿は観る者を魅了した。

 今春は全日本に出場できず、大学日本代表にも選出されなかったことから、リーグ開幕前はドラフトに向け「不安8割、楽しみ2割」と話していた麦谷。今夏は「その不安があったから秋に向けてしっかりとした準備ができた」。練習量を大幅に増やしたことが功を奏し、本塁打と盗塁は自己最多を更新、打率や打点もキャリアハイを狙える位置につけている。

 それでもなお、「前よりは自信がつきましたけど、何があるか分からないのがドラフト。ほかの(ドラフト候補)選手も結果を出しているので、もっともっと上を目指したい」と気は緩めない。ドラフト前の最後の公式戦は21日の盛岡大戦。「今までやってきたことを信じて、それを出すだけです」と気を吐いた。